この旧安田庭園を初めて訪ねたのは、旅行会社に勤務した15年ほど前、国内添乗でのことです。以前、私が富士銀行に勤務していたときは、芙蓉グループの役員の皆さまの個人担当をしておりました。そのときのご縁で、旅行会社に転職後、同グループのセメント業界視察研修旅行を手がけさせていただいたのです。まず手始めに、芙蓉(安田)グループの祖、安田善次郎氏が所有したこの和庭園を観光バスで訪ね、近く、ちゃんこ鍋の割烹「吉葉」で会食をするという日帰りコースをお作りしました。
川崎の通称「セメント通り」を訪ねたせいもあり、ふと懐かしく、往事を想い出しました。日帰り視察ののち、川崎・横浜方面での1泊2日視察旅行も手がけさせていただきました。開業して間もなかった横浜グランド・インターコンチネンタルホテルに宿泊。「みなとみらい」は造成工事真っ只中のときでした。窓外の景色、視界のなかに工事現場が入ることを、旅行会社はお客様に事前インフォメーションするのがサービスの基本。そこで景観をお伝えしたところ、ご参加の社長秘書さんら曰く「我々は、こうした現場を観るのが苦じゃないんですよ」という優しいお言葉に、ハッとさせられたことがありました。
近ごろ「工場萌え」「コンビナート萌え」「橋梁萌え」をする、"大人の社会科見学"ファンが増えていると聞きます。日本の産業を支えてきたひとたちの熱い思いを感じながら、ぐるり心字池を回遊。冬の庭園散策、空が澄んで気持ちも爽やかでした。