只見町での講演出番を待つ間、宿のラウンジに置かれた町の史料集に掲載されていたのが、この二冊。その場でスマホ、ワンクリックで、アマゾンから入手して、約1週間かけて読破しました。
こうした書物は研究費とは別に、個人の興味で購入していますが、ノンフィクションでも奥が深くて勉強になります。
田子倉ダムを舞台にした2冊、城山三郎【黄金峡】と曽野綾子【無名碑】です。
ダムに沈む南会津の村が舞台。ダム建設に翻弄され電源開発との補償交渉で村人たちが一喜一憂する光景が、まざまざと描かれている小説「黄金峡」は、速読可能で一気に読み上げました。それに福島・東山温泉の昭和のころの賑わいの根幹みたいなものを知ることができ、福島民謡「会津磐梯山」のメロディが脳裏に蘇るなど、心に響きました。
また、活版印刷の時代に発行されたであろう「無名碑」は、田子倉ダムのみならず、中盤は名神高速道路の建設、さらにはランパンとチェンマイの中間にあるサラメタで、タイの古都チェンマイやバンコクが舞台となり、文字通り道をつくる仕事にロマンを感じさせます。
このモデルが前田建設(小説のなかでは「作並建設」)であること、紳士然としていた前田建設の方と結婚した知人のことなどを、ふと思いだして読み進めました。
私たちが旅で知る今のタイよりも、時代はずっと遡ります。
道をつくるエンジニアの仕事、その主人公や狂気の妻、関わる人々の人間模様が、強い筆致で描かれ印象に残りました。
ストレスフルで忙しい今、クーラーの効いた涼しい居宅で夜一人、こうやって読書するのもよいものだな、と感じました。
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